映画『かがみの孤城』舞台挨拶 内容書き起こし(2023/12/23)

注意事項

個人的にメモとして書き留めていたものを書き起こしたものです。 細かい言い回し等まで完璧に再現できているものではありません。 また内容に誤りを含む可能性があります。 ご了承ください。 致命的な誤りがありましたら修正しますのでご指摘をお願いします。

イベント情報

  • 【日時】2023/12/23(土)18:30の回 上映終了後
  • 【会場】シネマスコーレ
  • 【登壇】原恵一監督

補足:この直前のトークショーイベントでQAの時間を取れなかったのでこの舞台挨拶の時間が全てQAに充てられている

Q1

今日で4回目の鑑賞になる。 靴を履くシーンがきめ細やかに描かれていた。 これについてお話いただけることはあるか。

A1

藤子先生の作品には靴問題と呼ばれる問題がある。 部屋から飛び立って路上に降りることになると靴が無くてまずい。 また、エスパー魔美も部屋から飛び立って路上に降りることになると同様にまずい。

毎回靴をはくという所作は見ている人にとっては無駄。 最初だけ見せて、あとは見せないといった感じにする。

かがみの孤城でも、靴下のままにするのはまずいと思い、靴を持っていって履くということを示した。 原作では(絵がないので)良かったが、アニメにするとまずいので工夫する必要があったということ。

Q2

最後の足元を映すシーンは前向きに踏み出したということか。

A2

かがみの孤城では足元を見せることで表情を想像してほしかった。 ただしアニメの監督しては普通はやらないことで、これを思いついて嬉しかった。 ラストが人物の表情変化でなくても成立する、表情だけが表現じゃない、それが映画だと思った。

Q3

萌の家でアイスを食べるシーンは、なぜ蓋をひっくり返すところに差をつけたのか。 ※萌は蓋をひっくり返したがこころはひっくり返していない

A3

それは迂闊だった。 気を使っていなかった。

Q4

鍵を扉に差し込んだままのシーン、階段を上がる前に絵をおいてシーンについて、あとで邪魔だからそのようにしたのか。

A4

鍵や絵をおいていったのはあとが面倒だから。 鍵は扉をあけるだけのアイテムなので問題なかった。 絵は邪魔だった(笑)。

絵が飾られているシーンでのこころと萌の会話のシーンは好き。 萌(の中の人)はポカリスエットのイメージガール(こころのオーディションに来た)。 こころ(の中の人)はカルピスウォーターのイメージガール。 このふたりが会話しているのが良い(笑)。

Q5

中学生の娘に質問を頼まれた。 マサムネの「真実はいつもひとつ」は誰の発案?

A5

自分の遊び。 キャスティングの段階で高山さんにお願いしていた。 役名がある人はひとりずつレコーディングした。 次の日に高山さんというときに何かやってもらえないか考えた。 そのシーンのBタイプとしてコナン君っぽいことをやってとお願いした。 高山さんが拒否したらやめようと思ったけど「いいよ」と。

色々言い訳を考えていた。 「このセリフは遊びじゃない」「時間がずれている」「キャラとしても謎解きキャラで良い」等。 色々考えていたがあっさりと承諾してくれた。

Q6

中村隆さんのことをお聞きしたい。

A6

この仕事をやっていて一番古い付き合いだった。 クレヨンしんちゃんの雲黒斎の野望で自分は絵コンテ、中村さんが美術監督だった。 そのときにすでに良い絵だと思った。 いつか河童のクゥと夏休みを作ってそのときに美術監督をお願いしたいと。 カラフルでもバースデー・ワンダーランドでも。

かがみの孤城で打ち合わせをしてそろそろ美術ボードを作ろうとしていたとき(初夏)、ご飯でも飲みにでも行こうと話していた数ヶ月後に亡くなった。

誰を代打にしようかと困った。 映画の美術は誰でも良いわけではない。 百日紅魔女の宅急便美術監督だった大野さんが「美術ボードだけはできる」と言ってくれた。 美術監督はまた別の若手の方。 同じ仕事をしている人の助け合いに救われた。