映画『かがみの孤城』舞台挨拶 内容書き起こし(2023/09/17)

注意事項

個人的にメモとして書き留めていたものを書き起こしたものです。 細かい言い回し等まで完璧に再現できているものではありません。 また内容に誤りを含む可能性があります。 ご了承ください。 致命的な誤りがありましたら修正しますのでご指摘をお願いします。

イベント情報

  • 【日時】2023/09/17(日)14:30の回 上映終了後
  • 【会場】CINEMA Chupki TABATA
  • 【登壇】原恵一監督、イケダさん(スタッフ)

は=原監督、い=イケダさん

はじめに

  • い:今年一年の最初に見た映画がかがみの孤城。原作は未読。衝撃を受けた。素晴らしい一年の始まりになった。包み込む居場所のような物語。特に神経を注いだところはどこか。
  • は:自分はこの物語のような不登校の経験は無いので想像で作るしかなかった。原作の持っている寄り添い方をなるべく壊さずに作ろうと思った。作った後でそういう経験のある人達に共感をもらい、嬉しかった。物語や映像作品はちょっとしたやりとりを押し付けがましくなくする部分にやりがいがある。自分に向いている作品だった。
  • い:原作を巧みに2時間にまとめたところも凄い
  • は:原作はミステリでもある。絵になったら違う年代だとバレてしまうのではと。でもインタビューを受けてこういった意見もあった。フリースクールの人達はあんな(お互いの素性を深く追求しない)感じでリアルだったと。携帯やゲーム機につっこんだらすぐわかっちゃう。でもフリースクールの人達はお互いに聞かない。聞かれたくないし、みんなそうだろうと。
  • い:原作にはないシーンもあった。その一つが光の階段のシーンで、印象的だった。クライマックスでファンタジーなのに、実在の階段のように一歩ずつ上がっていくのはリアルだった。
  • は:脚本にも特に書いてなかったが、鍵の場所に簡単に行くのではなく、光の階段を出した。リアルではない=本当にこれを上がっていくことができるのか、でもみんなを助けるために上がっていくことを、信じることを伝えたかった。アナ雪の真似だと言われるのではと心配だった。
  • い:普通はもっと余裕なのかと思った。
  • は:こころのキャラを際立たせるためにあのようにした。
  • い:観客の感想の中で意外だったものなどはあるか。
  • は:意外と思ったのは特に今は思いつかない。自分が見せ場と思っていた部分が伝わっていたので良かった。インタビュー等で、実は自分も不登校だったと言う人が多かった。こんなに多いのかと。近しいスタッフの子供もそうだと。正確な数は把握できていないが(言いたくない人も多い)日本の全小中高に必ずいるらしい。学校は学校でフリースクール登校のようにしているところもある。自分の教室に通えない人が集まる場所を作るとか。また、卒業した兄ちゃん姉ちゃん達がアドバイスに来てくれたりも。母親達には言えない(おおごとにしたくない)。母親達は理由がわからなくてイライラする。理由を言わなくても行かなくても良い。以前は不登校でも今は普通に働いている人はいる。映画を見にきてくれても良い。

Q1

シッチェス・カタロニア国際映画祭への出典おめでとうございます。今回は久々にエンドロールだけで終わるパターンだった。これまではエンドロール後の追加映像が色々変わってきた。進化する映画だと思った。微妙なリテイク等もあったらしいが、幾度の修正もファンとして讃えたい。追加映像について監督が思うことはあるか。

A1

アニメ制作は共同作業。どうしてもバラツキがあり、スケジュール上の理由で直せないものもあり。マスコミに初号版(ゼロ号版)として見せたものから、まだ直し切れずに直したかった崩れ等は直している。または純粋なリテイク(ミス)もある。BDが出ているが、それは直したものが反映されている。直したものとして大きかったのは、東條さんとこころがアイスを食べるシーン。他のシーンとキャラが違ってしまったので直した。

Q2

館林での上映会に行った。「514人の子供達」の意味を考えてみた。今後もいじめ対策に寄り添った作品を作ってほしい。

A2

「514人の子供達」の話を知らない人もいるかもしれないので。これはフランスのアヌシーの上映で伝えたこと。昨年自殺した子供の数は、1980年代に統計を取り始めて以降最多だった。どうしたら解決できるのかわからない。子供の自殺は大人の自殺とは意味合いが違う。何の希望も無くなって自殺する。でももう少ししたら大人になれたかもしれないのに。

世の中の多くは、クラスの人たちは、傍観者。介入したら自分も巻き込まれる。ヒーローになる必要はない。ちょっと勇気を出して、言葉をかける、寄り添う。それだけで空気が変わる。先生も大変。真面目な人ほど。朝から夜まで働き詰めで、部活もある。企業だったらブラック企業。そこもなんとかできないかと。傍観者でも、ちょっと勇気を出す。常にそうでなくても良い。ちょっとだけで子供には大きく印象に残る。

今作は良い感想を頂ける映画だった。このようなことは必ず言ってもらえるわけではない。この作品はたくさんの良い感想を頂けた。これからも作っていきたい。